断片001

名前が分からない。
名前が思い出せない。
全てが思い出せない。
白い部屋、ただっぴろい部屋に僕は放り込まれたみたいだった。
何かを思い出そうとすると、頭にピキリと音が鳴るような頭痛が走る。
手元にあったカバンに入っていたノートとペン。
これに僕はいろいろと書き記していこうと思う。

この部屋は形が四角形。
そして各辺に対応して4つのドアがある。
そのほかには何も無い。
いや、一つだけあった。頭上に、部屋の丁度真ん中辺りに
時計が設置されている。
でもそれは止まっている。5時33分をさしたまま。
この部屋にいると、自由に動き回れるのに
なぜか鎖につながれているような気分になって、怖い。

止まっている時計は自由だな、とふと思った。