傷は傷であり、傷でしかない。あとは膿んで爛れるだけ

失恋した相手と、彼女の早稲田の友達と、そして塾が一緒だった浪人している友達と映画
を見に行ってきました。正直気まずい空気を消すことができなかった気がする。俺には
能力なんてなかった。彼女の声は相変わらずかわいくて、でもめがねをはずして、髪を
染めて、すこし雰囲気が変わっていた。なんだかレズっぽさも出していた気がする。俺の
気のせいでただの妄想かもしれないけどね。相変わらずコアな腐女子。一人称は「僕」。
まあ少しは楽しめるだろうと思って行った俺が馬鹿だった。本当に馬鹿だった。こんな
自分は死ねばいいんだと今は心底思っている。映画の内容もやばかった。まああのアニメの
秒速5センチメートル。面白いし音楽もいいし、最後のTRUEエンドっぽさはすばらしいの
ですが、正直告白だのなんだのすきだの何だのモノローグ形式で話が進むのはとてもつらい。
何度も何度も、心臓に釘をさされて、のどにも釘を刺されて、それでもうお前は存在するな
と耳元でささやかれて、死神の鎌で全身を切り刻まれて置いていかれた。体はまだここにある。
でも心は深遠の闇に沈み込んで、生き返ることができないほど爛れて、膿んだ傷を抱えている。
思えばあの日、自分が勇気を出した日、あの日のあの言葉さえなければ今自分はどんなに幸せ
なんだろうかと思うと心がきりきりと痛むし、悲鳴を上げる精神はそのたびに後悔と自責の念で
押しつぶされそうになる。というよりかは、実際に押しつぶされてペシャンコになっている。
弾力を失って、新鮮さを失って、朽ち果てていく灰色の精神。もう心が自分の体を離れてどこか
へ飛んでいって、後には、そう胸の、おそらく心が入っていた場所には重い重い金属の無機質な
錘だけが残っている。彼女は早稲田でオタクを全開に出しているらしい。正直うらやましかった。
裏千家と東大アビーロード、ペンクラブは別としても普段行っている二つのサークルで本当の自分を
出せずに日々もがいている醜い俺がなんだかとても情けなくなった。ただ塾に一緒に通っていて、少し
仲がいいとは言え普通の仲だったのに、身勝手で放漫で無神経な俺の言葉が彼女を傷つけてしまったん
じゃないかと思った。片山は昔「人を変えることなんてできない」って言ってたけど、今は若干その
言葉を修正したいと思う。「人を変えることはできないけど、不自由な言葉で人を意図しない方向に変えてしまうことは十分ありえる」って。俺の言葉が彼女に何かしらの変化をもたらしたなんて俺のただの放漫で
しかないのかもしれないけれど、それでも俺の心にそんな感覚が深く深く刻み込まれた。しばらくまた
鬱状態がつづくんじゃないかな。イエールに行ったあの人といい、今日のあの人といい、前者は完全なインハイ、まっとうで完璧で、美しい、後者はアウトローな方向で、何かが俺とは違うと感じた。結局
社会からあの日俺は見放されたのかもしれない。世界を変えたいと思う一心のはずなのに、自分の周り
さえろくにコントロールできないなんて、そんなのなんだか悲しいけれど現実。
あらゆるものは灰色で、
あらゆるものは輝きを失い
あらゆるものが去っていく
過ぎ去りし日々に思いをはせることも、未来への希望も持つことができないまま、きっと干からびて死んでいく、そんな深い暗闇を伴うひそやかなイメージが、いま頭の中を支配している。
それでもどうしても彼女とつながりを持っていたいから、また手を打っておいた。
彼女が連れてきた彼女の友達につまらない思いをさせるわけには行かないから、
精一杯がんばってきた。はちきれそうな思いは、今ここで爆発して粉々になっている。
なんだか遺書みたいになっちゃったね。大丈夫。
こんなに傷ついて、こんなに痛みと重みを感じる世界から
俺がもっと楽しまずに
去っていくなんてことありえないから。
まあ、心臓に杭を打たれるのがどういうことか実感した日でした。