平等で幸せな世の中

moontyはくらい部屋で。ノイズを聞きながら一人考えた。
「ああ、平等とは何であろうか。権利とは何であろうか。平等でなくてはならないのか。みな自分に権利があると勘違いをしすぎている。とんでもない人間が多いものだ。プライバシーやらなにやらめんどくさいものが生じて、みなの生活を阻害している。個人情報保護。あの群集は自分に個人情報を守ってもらう権利があると思っているのか。全員が守られるなら、逆に言えば、全員がさらけ出すのも平等ということになる。全員の家にカメラをつけて、四六時中監視する。あらゆるものが例外なく、お互いの目にさらされ。そう。平等だ。それにはみなおそらく反対するであろう。結局のところ。自分が有利になる平等、自分が少なくとも多数派、そして周りから隠れ、本心を隠して馴れ合う。平等を感じ、平和と幸せを感じあいと思っている群集が多いのだろう。平等、みな平等が好きだ。自分はあるものに対し「判断」を下し、区別。何次元かのドグサのうちに生きるくせに、自分が区別され、隔離されるのは恐ろしく、隠れたがる。そのうち社会の中での五十音順などの制度も破壊されるであろう」
彼がつぶやいているのを窓の下で聞いていた男は、こういった。
「ああ、五十音の並びの廃止、すばらしいではないですか。私にそれをください。ください。私はそれがほしいのです。私の苗字は青木です。常に教室の前のほうの席で、そもそも、五十音順ではじめに並んでいると、その瞬間ア行もしくはカ行の人と友達になることが決め付けられてしまいます。どうしてくれるのでしょう。私の、私の自由に友達を選ぶ権利は、どこへいったのでしょう。民主主義、あれはどこへ行ったのでしょう」
「君は、背の順も廃止になったほうがいいと思うかね?」
かれはいきり立って答えた。
「そうです。思います。私は背が低い。前に並ばされるなんてまるで、まるで差別じゃないか、馬鹿にされてるんです。そうです。僕は権利を剥奪された、かわいそうな被害者なんです」
moontyはため息をついた。
「民主主義ではない。君の言ってるのは愚衆制だ。君に本来は権利はない。それがわかるまで、君はずっとその、窓の外の、美しい場所にいることになるのだ。窓の内側は汚く、汚れている。だがそれでこそ、善美なるものは姿をあらわすのだ」
男は、moontyのことを軽蔑のまなざしで見ると、とぼとぼと去っていった。
なんとだめな人間多いことか!moontyは嘆いた。
「ああ、君主制よ。愚かな民衆は、どうして、あなたを廃止したのだろう!!!」